【人手不足を解決】賃上げに悩む中小企業、経営者がすべき対策とは?

大手企業を中心にベア満額回答の波が広がっています。
しかし中小企業の中には賃上げの実施が難しいケースがあります。
今回はベースアップをせずに人手不足を解消する方法をお伝えします。


賃上げしないことで発生するリスク

1.優秀な人材が辞めていく

物価が上がっているにもかかわらず給料が以前のままだと、生活水準が下がります。
すると、欲しいものが買えない・子供の習い事に二の足を踏む・毎月の貯金額を減らすなどが起こり、ストレスが溜まる一方です。

こうしたストレスを解消するために、まず思いつくのが残業です。

しかし優秀な社員は、残業しなくても仕事を終えています。
すると、ある怖い考えがよぎり始めます。
それは業務時間に手を抜いてワザと残業をすることです。

家族を守るために… お金がいるため…
良くないことだと分かりながらも「給与を上げない会社が悪い」という思考のもと、残業代を稼ごうとします。

こうなると会社としては何に給料を払っているのかわからない状態です。
あきらかに生産性は下がっていますので「これだったら賃上げしていた方がまだマシだった」となります。

そうこうしている内に、優秀な社員は転職していきます。
なぜならプライベートを犠牲にしてまで残業をすることが馬鹿らしくなるからです。

辞めるまでには色んな葛藤があるでしょう。
しかし「生活のためには仕方がない」という選択になるのです。

1人辞めると、どんどん優秀な人材が辞めていきます 。
そうなると会社の存続問題にも繋がりかねません。

優秀な社員は簡単に採用出来ませんし、育てるのも容易ではありません。
また、人員補充のための労力・コストは 賃上げの何倍にもなる可能性があります。

2. 人材の採用が難しくなる

日本は少子化によって働き手がどんどん減っています。
そのため「優秀な人材の奪い合い」がますます激化すると言われています。

企業が生き残るためにも、優秀な人材の確保は必須です。
しかし給料が低いと。採用活動が困難になることは想像に容易いでしょう。

このことはジョブズリサーチセンターの調査報告でも見てとれます。

あなたにとって働く目的とは何ですか?
1位:生計維持のため
2位:自由に使えるお金の確保
3位:貯蓄・貯金のためとなっており

このように「給料」は重要な要素だということを改めて確認することができます。

また仕事探しを行った最大の理由では1位に「お金が必要になった」があり、正に現在のインフレはこの状況に当てはまるのではないかと思います。

このことから、給料に魅力が無い会社は選択肢に入りにくいことが想像できます。
また賃上げされないことにより、転職を考える可能性が高くなります。

もちろん、お金が全てとは言いません。
しかし生活やプライベートの充実を考えると、同じ業界・業種の仕事をするなら、少しでも条件が良い所を探すでしょう。
他社と比較した際に給料面で見劣りするのは、思った以上にデメリットになります。

あえて給料の低い所を選ぶとしたら、それは給料以外に魅力的な何かがあるからです。

同じ業界の大手や有名企業など、給料の高い会社に勝てるほどの魅力があれば良いでしょう。
しかしそうでない限りは、よっぽど採用活動に力を入れないと人材の確保は難しくなります。

こうして見ると賃上げしないことは、本当に大きなリスクを含んでいます。
しかし、賃上げすることは容易ではありません。

一旦上げてしまうと下げることはとても難しくなりますし、賃上げにより経営が圧迫されては元も子もありません。

ではどうすれば良いのか?

賃上げできない問題を解決する3つの方法

1. 社内環境を整える

従業員が離職を踏みとどまる要因に「帰属意識」があります。
要は、会社に愛着があるかどうかです。
社内環境というとかなり範囲が広い ですので「対人」「環境」2つの視点で解説します。

対人

対人とはコミュニケーションのことです。
人間関係は、職場の居心地に大きく影響します。

ジョブズリサーチセンターの調査報告では「仕事探しを行った最大の理由」の3位に人間関係がランクインしています。

お金が苦しくても居心地が良いと、スグに辞める決断になりません。

人間関係の悩みが0になることはないでしょう。
しかし出来る限りストレスを軽減することは、帰属意識を高めるだけでなく生産性の面から見ても重要です。

定期的に研修を行うなどして、コミュニケーションを円滑にする努力を行うことをお勧めします。

環境

次に環境ですが、これはオフィスのことです。

「職場のキレイさはモチベーションに関連する」ということは、多くの研究で報告されています。
逆に汚いと、ストレスが溜まり攻撃的になるという研究結果もあります。

机や椅子への配慮をすることは、腰痛や肩こりなどの健康被害を軽減して集中力を高めます。

またフリーアドレス(席を固定せずに好きな場所で働ける)の導入は、自律的な働き方を促進します。
そして仕事へのネガティブな印象が薄れさせます。

これらの取り組みは微々たるものですが、従業員からすると毎日のことのため、とても大きな要素です。
このような改善をすることで、帰属意識は芽生えます。

2. 出社を柔軟にする

出社は従業員にとって大きな労力がかかっています。
朝から満員電車に乗るだけで疲れますし、車で渋滞するのはイライラします。

こうした負担を軽減するだけで、帰属意識は高められます。
フレックスや時差通勤、テレワークを導入しましょう。


なんだよ、そんなの普通じゃんと

思うかも知れませんが、制度としては浸透していないのが現状です。

フレックスの導入している企業はたった「5.6%」です。(出典元:厚生労働省
テレワークは「32.2%」となっています(出典元:内閣府
時差通勤も20.2%です(出典元:ニッセイ基礎研究所

1993年リリースの広瀬香美の「ロマンスの神様」という歌。
この歌詞に「フレックス」という言葉が出てきますが、30年経った今も「普通」ではありません。

でも、そこにチャンスがあります。
ライフワークバランスやウェルビーイングが求められる現在。
こうした従業員満足を高める施策は、企業価値を高めるからです。

とはいえスピードが命でしょう。
他社がやっていない今だからこそ、大きな武器になります。

「他社と差別化したい!」という経営者は多いですが、他が出来ないことをするだけが差別化ではなく、当たり前のことを他より早く行うことも差別化です。

何でもそうですが、先行者利益があります。
いつだって大きな得を得られるのは、先に行動した人なのです。

とはいえ新たな制度の導入は、費用や手間が発生します。
導入を検討する際はm賃上げとの比較をしっかりとした上での判断が必要です。

その上でGOサインが出るなら、大きなアドバンテージとなるでしょう。
ウチは「フレックス出来ない業種だから」と最初から否定するのはやめましょう。

従業員満足を高める出社の仕方を考えることが、人材の定着や採用の強みにつながります。

3. 副業の解禁

どれだけ魅力的な職場でも、給料が低くて生活が苦しくなるようでは転職を考えるしかありません。
しかし、無理して賃上げして会社が傾くようでは、それこそ意味がありません。

そこで副業の解禁です。
「お金」の問題をクリアにすることで、従業員の生活を守るのです。

経団連の調査では、副業を解禁する企業側のメリットがこのように報告されています。

  • 多様な働き方へのニーズの尊重
  • 自律的なキャリア形成
  • 本業で活用できる知識・スキルの習得
  • 人材の定着などのメリットが報告

このように副業は、従業員の「お金」の問題を軽減してくれるだけではなく、企業にも恩恵をもたらしてくれるのです。

しかし、私の提案はこれだけでは終わりません。

さらに「副業先」としても手を挙げましょう!

副業を容認する会社は年々増えてきていますが、副業したい方を受け入れOKの会社はまだまだ少ないのが現状です。

2022年の経団連の報告では、副業を容認する企業の割合は「53.1%」です。
しかし外部から受け入れを認めている企業は「16.4%」しかありません。

なおこの調査では、受け入れを認めている企業のメリットがこのように報告されています。

  • 人材の確保
  • 新規事業創出やイノベーション促進
  • 客観的な視点の確保
  • 他業種の知見・スキルの習得

「生産性向上に役立った」という意見が、多く報告されています。

他社が副業を容認すればするほど、優秀な人材は副業先を探します。

そこにあなたが受け入れ先として手を挙げることで、優秀な人材を確保することが出来ます。
これも他社がやっていない「今だからこそ」大きなチャンスがあります

特に大手は副業をどんどん容認しているので、優秀な人材の受け入れをしていない企業が多い「今はチャンス」です。

このように副業先として受け入れを行うメリットは、計り知れないものがあります。
また企業に魅力を感じてもらえると、優秀な人材が定着しやすくなります。

ただしリスクもあります。
業務に支障を出さないこと・情報漏洩・信用失墜行為の禁止など、お互いにとって心地よい就業規則の整備が必要です。