後継者社長を悩ませる「改革を拒む幹部・古参社員への対処法」と「事業継承4つのポイント」

後継社長の悩みの1つに、先代の時に入社した古参社員との関係があります。

その中でも特に困るのが、新たな挑戦をしようとすると反対をしてくることです。
もちろん全ての反対が悪い訳ではありません。思い込みや感情での反対が困るのです。

強引に改革を行っても良いのですが、そうすると長きにわたって貢献してくれた彼らを蔑ろにしてしまいます。出来れば合意を得て一丸となり進めたいですよね。

そこで今回は、古参幹部や古参社員への対処法と事業継承のコツをお伝えします。


変革を阻む古参役員・社員への対処法

あなたは「この先食糧問題が来るから、我が家はこれからコオロギを食べます」と言われて、すんなりOKを出せますか?

「昆虫食に興味がある・昆虫を食べるのが好き」という方なら抵抗なく受け入れられるのでしょうが、多くの方は難しいのではないでしょうか。
コオロギを食べずに済むように、なんとか説得をしようとしませんか?

あなたが「コオロギを食べるなんて絶対無理!」と思っているように、古参社員はこれに似た拒否反応を起こしています。
この背景には「今まで築いてきた自分の優位性が崩れる」という不安があります。

「優位性を崩したくなかったら、頑張って新しいことに挑戦すればいいじゃないか」と思うかもしれませんが、気持ちはそんなに簡単ではありません。

少し想像してみてください。
大富豪で絵札や1を持っていて「あとちょっとで上がれる!」って時に『革命』を起こされたくないですよね。

「ふざけんなや!なんで変えるねん!」「変えるんやったらもうちょい後にしろよ」って言いません?
私だったらついついそう思っちゃいます。

何かを変えることは、優位性がある方には嫌なものなのです。
古参社員は、この優位性を持っているため、変革を嫌います。

もう少し具体的な例をだしますね。

訪問営業で会社を支えてきた「営業畑一筋」の古参社員にとっては、過去の成功体験は自信の土台となり、社内での自分を支えています。
訪問営業からオンライン営業に変わったからといって、過去の実績が消える訳ではありませんが、なぜか蔑ろにされた気分や自分を否定された気持ちになります

そのため「画面越しに誠意は伝わらない」や「ZOOMでは関係は築きにくい」「電源切ればスグに逃げられるから契約率が悪くなる」など正論ぽいことを言って、オンラインで営業することに反対したり苦言を呈してきます。

また、部下の指導面を見ても不安要素があることがうかがえます

「今まで営業は足で稼ぐものだ!」「汗をかいて関係を築くんだ!」と指導してきたのに、それが根底から崩れてしまう。
そうなると、何を指導すれば良いのかがわからなくなります。

しかも「新しいことに挑戦する」ということは、ベテランも新人も関係なく横一線でよーいどんになります。
勝負に勝てれば良いですが、万が一負けてしまうと。自分の価値が下がってしまいます

この前まで偉そうに指導していたのに、上下が逆転してしまうのです。

先代の頃から一生懸命に会社を支えてきたにもかかわらず、若手と上下が逆転してしまう… 想像するだけで怖いですね。

こうした想いが無意識にあるため、ついつい反射的に抵抗するのです。
しかも、自分の方が社歴が長く「この会社のことを解っている」という自負があると、より強く反対する傾向があります。

ではどうすれば良いのか?

対処法は、「古参社員の優位性を守り、変化することのリスクを出来る限り軽減すること」です。
役職や給料はもちろんですが、それ以上に「存在価値を確保する」ことが大切です。

人は貢献していることに喜びを感じます。新しいチャレンジの中にも、古参社員が活躍できる場を創り出せると良いでしょう。

古参社員の持っている知識や経験には、役立つものがたくさんあります。
後継者として「古参メンバーのリソースをどうすれば上手く使えるか」を考えることが大切です。

また、反論には的を射ているものも多くあります。
このような意見をどう調整していくのかも、後継者として腕の見せ所だと思います。

そして決して「相手に変わって欲しい」と強く説得しないことです。
童話、北風と太陽の話の様に「変われ!」と風当たりを強くするより、暖かく受け入れることが変化を促します。

手法やシステムを新しくしても「それを使う人が納得していないと元にもどる」という事例もあるので、古参に限らず「新たなことをする際にはある程度の同意をとる」ということも大切です。

事業継承4つのポイント

協力の依頼

  • 後継者選定の過程
  • 選定の理由
  • 後継者の掲げる経営理念
  • 新体制の中身

これらを丁寧に説明し、理解を求めましょう。これは現社長がやるからこそ効果があります。

現社長の経営方針や人柄に惹かれて一緒にやってきた古参メンバーにとって、現社長の言葉が1番響きます。

想いを込めてしっかりと説明し、後続社長への協力を求めましょう。

役割の明確化

長年勤めてきた古参といえど、やはり社員です。
後継者が誰であっても、社長の指示を仰ぎ・社長を支持することが求められます。

そこには望まない役割もあるかも知れま せんが、それでも社員として節度を持った関りをすることの重要性を伝えましょう。この意識改革は現社長が行うことです。

俺の方が経験が上とか、この会社のことは俺の方が知っているとかは、一旦脇に置いてもらいましょう。

新しい社長と改めて出発する気持ちを持ってもらうことが大切です。

人事異動

新体制の支障とならないよう、前もって人事異動を行いましょう。

この際には「古参社員の実績や経験を十分に配慮した人事異動であること」と「それを了承してもらうこと」が前提です。

新体制の方針をしっかり説明し、人事異動の理由や求める結果を伝えてください。

そして、期待を込めた人事異動であり、重要な役割だと話してください。

引退勧告

これまでの3つを行った結果「理解や納得を得られないケース」や「高齢の方」には引退を勧めることも、現社長の仕事です。

野球選手の引退式ではありませんが、功労者に対して何かしらの ”セレモニー” があると良いでしょう。

送別会をするとか、退職金を多めに出すとかだけではなく「この会社にいて良かった」と思えるような、そんな心温まる最後にしてあげることが、感謝を示すことになると思います

最後に

ご紹介した4つは、いずれも大変な仕事だと思います。
しかし現社長がこれらをすることで、後継者はグッと楽になります。

そして引き継いだ後継者には「古参社員とのコミュニケーションを密にとる」ということを教えてください。

後継者は若手や新しいことに目が向きがちですが、古参社員には豊富な経験と知識があります。

また、ベテランを大切に扱う姿勢は、若手が会社に居続ける理由にもなります

是非、上手く事業を引き継ぎ、益々発展されることをお祈り申し上げます。