社員の離職、初期に現れる「3つのサイン」

巷で言われている離職のサイン「残業しなくなる」「机が綺麗になる」は末期の症状で、これに気付いた時はもう遅いです。

今回は離職を早期発見・予防する方法について解説。また離職が起こる原因を公認心理師の視点で解説します。


離職が起こる心理的な要因

まず、以下の図をご覧ください。これはアメリカの心理学者マズローが提唱した人間の欲求を表すものです。

下の欲求が満たされると上の欲求を追求すると考えられています。
「自己実現を求めた離職」と「心理的安全性からくる離職」の2つが あることに気付けるかと思います。

生理的欲求

これは人が生きていく上での根源的な欲求で、食事、睡眠、排せつ、生殖などの本能的な要求を指します。

職場においては「長時間労働」「過重な仕事量」が生理的欲求の低下を引き起こす可能性があります。

そのため、ワークライフバランスを考慮し、長時間労働の削減や柔軟な労働時間の導入が重要です。

安全の欲求

れは身体的、精神的な安定を求める欲求です。

給与、パワーハラスメント、モラルハラスメント、会社の安定性などがこれに関連します。
給与面で自信のない会社は、給与以外で社員の満足度を向上させる価値を創造することが大切です。

ハラスメントに対しては、意識的な研修が必要です。

社会的欲求

仲間や人間関係に関する欲求で、職場での居場所やつながりを求めます。
社会的孤立を感じると、離職の要因となります。
環境整備と定期的なコミュニケーションが社会的欲求を満たすのに重要です。

承認欲求

自分の価値を他人から認められたい欲求で、出世や有名になりたいという欲求も含みます。
職場での頑張りや成果を認めることは、社員のモチベーション向上につながります。

自己実現の欲求

自分の可能性を追求し、能力や才能を最大限に活かしたいという欲求です。

この欲求が高まると、キャリアアップや独立を考える可能性が高まります。
引き留められるほどの興味を惹く仕事を与えられないと、転職を避けることは難しいでしょう

離職を考える社員が出す3つのサイン

離職を考える社員は、仕事へのモチベーションが低下します。
普段の行動や態度が変わり、これが本人にとっても無意識のサインとなります。

退職を考える社員が示すサインとして「残業の減少」「休日出勤の減少」「デスク周りの整理整頓」が挙げられます。

しかし、これらのサインが現れた時点で既に末期の症状と言えるでしょう。早めの対処が重要です。
経営者や管理職は部下を観察して見逃さないようにしましょう。

それでは次に、「離職を考える社員が初期に出す3つのサイン」をご紹介します。

離席が増える

普段より、タバコやトイレに行く頻度が多くなると注意が必要です。
仕事へのモチベーションが下がっており、集中して取り組めていないため、席を立つ頻度が増えます。

また、一回当たりの離席が長くなることも特徴です。
本人も離籍をすることは良くないとわかってはいるでしょうが、何かしらの要因によりやる気になれない状態に陥っています。

この状態が見てとれたら注意するのではなく、まずは喫煙所やトイレなどで話すようにしましょう。
そして、気に掛けていることを示しながら、相談しやすい雰囲気を作ってください。

それでも相談に来ないようであれば、話を聴く機会を設けましょう。
この際は、会議室などで堅苦しくするより、カフェなどで気軽に話せるようにすることをお勧めします。

落ち着いた音楽が流れていて、静かな場所であれば尚良いです。
また、席はソファ席が良いですし、飲み物は温かいものの方がリラックス効果が高いので、話しやすい状況を作りやすくなります。

コミュニケーションが減る

コミュニケーションをとることは、社会的欲求を満たすものです。
そのコミュニケーションが減るということは、今のコミュニティからの離脱を考え始めたと捉えることができます。

仲の良い仲間との交流は今まで通りだったとしても、先輩や上司との絡みが減っている時は要注意です。

また、気に掛けて声をかけた際に、普段よりもよそよそしくすることがある場合、気をつけて観察するようにしましょう。

辞めることを考えている時に気に掛けた行動をされると罪悪感を感じ、よそよそしくなりがちです。
この場合、まずは立ち話をしながら相手の状況を確認して下さい。

立ち話をした印象が大丈夫そうであれば、先程同様に、相談に来やすい雰囲気をつくります。
相談に来ないようであれば、カフェなどで話す機会を作ります。

しかし、そうでなければ1on1などで話す機会をスグに設けてください。
先程より深刻度が増すので、こちらも真剣に話す姿勢を見せることが重要になります。

意見を言わなくなる

普段、意見を言っていた人が言わなくなってくると要注意です。
それは諦め出したと捉えることができるからです。

意見を言うことを諦め、開き直って仕事をしてくれるなら良いですが、それだとただの歯車に感じるため、承認欲求が満たされることはありません。

すると、必要とされるところに行きたいと思うので、徐々に離職を本気で考えます。もし、意見を言わなくなってきているなと感じたら、積極的に声をかけ、意見を聴く姿勢を見せましょう。

もちろん、その時だけではなく、日頃から意見を聴く姿勢が大切です。

意見を聴く時のコツは、スグに否定をしないことです。もし否定をする場合はサンドイッチで伝えつつ、しっかりと理由も伝えるようにしましょう。明確な理由もなく否定されると、意見を聴いてもらえていないのと同じです。

聴く姿勢を保つからこそ、諦めることなく、次も意見を言おうという意欲を持てるのです。

まとめ

一般的に、離職の主な原因は「労働条件」「人間関係」「給料」と言われています。

しかし突き詰めていくと、いずれも「心理的なもの」が大きく影響しています。

経営者や管理職が部下の心理状態を知ることで、離職は防げるのではないでしょうか。