退職引き止め交渉「管理職の失敗例」3選【社員の本音】

退職の申し出を受けた時に「やってはいけない交渉の仕方」をしてしまうと、引き止められないだけではなく、他の社員に悪影響を与える可能性があります。

今回は管理職がやりがちな「やってはいけない引き止め方」と「正しい引き止め方」をご紹介します。


退職の相談をチャンスに変える

正直、退職の話をされた時点で、引き止めることはほぼ出来ません。
しかし、相談なのか報告なのかで、引き止められるかどうかが違ってきます。

相談であれば、まだ可能性はありますが、報告だと引き止めることは難しいです。

そのため、普段から退職の兆候がないかを観察することが大切です。
(退職を考えている社員が出すサインについては、こちらで解説しています)

とはいえ、退職の相談はいつも突然です。
この突然の出来事におろおろしているようでは、経営者やリーダーの器が損なわれます。そうならないためには、ピンチをチャンスに変える心構えが大切です。

退職の相談がチャンスになるの?と思う方もいるかと思いますが、大きなチャンスを秘めています。そのチャンスとは、経営改善の機会です。

退職には、不満を理由にしたものとキャリアアップを目的にしたものの2つがあります。いずれの退職理由にしても、今抱えている課題を知らせてくれる機会になります。

不満がある場合

主に人間関係や労働条件、給料などに原因があります。
こうした要因を心理学では衛生要因と言い、改善しないとモチベーションを下げるものとして考えています。

改善したからと言って、モチベーションが上がるわけではありませんが、この要因を放置すると仕事への不満を増殖させ、社員のやる気を奪い、生産性を下げることにつながります。

現状、退職を言い出しているのは1人だったとしても、口にしないだけでモチベーションは下がっており、見えない所で退職の意思が固まりつつあるかもという危険があります。

キャリアアップの場合

自己成長ややりがい、承認などが主な要因になります。
心理学では動機づけ要因と呼ばれており、仕事に対する満足度を高めるものとして考えられています。

そのため動機づけ要因を満たすと、モチベーションが高まり自主性も芽生えます。
しかし動機づけ要因を高めたからと言って、不満が解消されるわけではありません。

そのため、衛生要因と動機づけ要因の2つの側面から改善が必要です。

退職相談は、この改善点を知る良い機会であり、改善することで社員の満足度を高め、生産性向上につなげることが出来ます。
そのため、退職の引き止めが出来なかったとしても、企業側にはメリットがあります。

退職は企業にとって痛手ですが、このことから気付きや学びを得て、未来に活かすことが経営者やリーダーの器を広げます。

それにもかかわらず、やってはいけない引き止め方をしている方がいます。
ここからは、離職を引き止められない管理職の失敗例3選を見て行きます。

1つ目と2つ目は心理的なもので、3つ目は法律的なものを解説します。

退職を引き止められない管理職の失敗例3選

延々と説得を繰り返す

部下の退職を引き止めたい!思い留まらせたい!
その気持ちが強いほど、説得しなければと思う上司が多いはずです。

しかし、部下としては話を聞いて欲しいので、話を遮って説得するのは逆効果です。

恋愛で考えてみて欲しいのですが、別れ話を持ちかけるには持ちかけるだけの理由があります。
その理由も知ろうとせずに、あるいは、ほんの少し聞いただけで論破するがごとく説得をすると、「そういうところが嫌なんだって!」と言われるだけです。

また「ここで通用しない奴は他に行っても通用しない」とか「今辞めるのは無責任とは思わないのか?」「お前のためを思って言っているんだぞ」と説得する方がいますが、これもNGです。

このセリフを恋愛に当てはめると「お前なんか俺以外の男は相手しないよ」「一方的に別れたいって酷いと思わないの?」「お前のために言っているんだぞ!」みたいな感じになります。

もう次の会社が決まっている場合、遠回しにその会社の悪口を言う方もいますが、それも恋愛に当てはめると次の恋人の悪口を言っているだけなので、引き止めるどころかより心は離れていくだけです。

こうして恋愛に置き換えると、どれだけカッコ悪くてどれだけ最悪なことを言っているかが分かりますよね。

大切なのは、まず話を聴くことです。
なぜ辞めようと思ったのか?まだ説得の余地はあるのか?などを聴こうとする姿勢が大切です。

この姿勢が、退職というピンチをチャンスに変えるのです。
上手くいけば、引き止めることも出来るので、会社としては一石二鳥になります。

退職を引き延ばそうとする

「今辞められると大変だから落ち着くまで待って」「新しい人が入るまでは居てくれないと困る」など、自社都合や管理職の都合で退職を引き延ばそうとする方がいますが、これもNGです。

恋愛に例えると「今別れられたら困る!」「次の恋人が出来るまで待って」ということになります。

会社側としてはほとぼりが冷めるまで待つ狙いや、引き延ばした期間で説得する狙いがあるかも知れませんが、こんな引き延ばしたかをすると大きなリスクを抱える可能性が出てきます。

退職希望者は会社には本音を話さなくても、同僚には本音で話していることが多いです。
無理やり引き止められたことも、同僚に話す確率は高いと考えられます。

そうなると他の社員も会社に対する不信感が高まり、モチベーションの低下を招きます。
退職を引き止めるという目先のことを優先したばかりに、長期的に損をすることになるのです。

大切なのは自己都合ではなく、相手の都合を聴くことです。
そして、相手の抱える悩みを解決出来るように一緒に考える姿勢が大切です。

その上で、お互いが変えられるものと変えられないものを整理をし、変えられるものについて話すことで引き止める交渉をすることが大切です。

中には、給料を上げるや部署を変えるなど安易な約束をする方もいますが、絶対に辞めてください。
いくら口止めしてもその話は同僚に漏れ伝わります。

そのため、社内で不平不満の原因となり最終的には、退職を切り出した者勝ちになります。
誠実に、真摯に話し合う姿勢が引き止められる&引き止められないに関わらず、会社の価値を高めます。

圧力をかける

  • 後任がいないから退職を認めない
  • 退職金も今月分の給料も支払わない
  • 有給消化は認めない
  • 退職しても離職票は発行しない
  • 退職するなら懲戒解雇として扱う
  • 退職するなら損害賠償を請求する

このような圧力をかけて退職を踏みとどまらせようとする方が稀にいます。

言うまでもありませんが、これらは違法です。万が一、訴えられたらOUTな案件です。
就業規則を振りかざして退職は〇か月前に申し出る必要があるんだと上から言う方がいますが、これもoutになります。

案外、知らない方が多いのですが、労働者には、退職する自由が民法で認められています。
この自由は、労働契約に期間の定めがあるかないかによって異なります。
期間の定めのある労働契約の場合は基本的に期間の途中で退職することができません。

しかし、やむを得ない事由があるときはこの限りではありません。
正社員や無期契約社員など期間の定めのない労働契約を結んでいる場合は、2週間前に退職の意思を告げることで労働者は理由を問わず退職することができます。
これは民法で決められていることであり強行規定という強いものになります。

そのため、違反する特約や個別契約などは無効となるので、いくら就業規則で退職は○か月前と言っても2週間で退職が出来ます。

このことを踏まえると、強引に引き止めてリスクを負うのは馬鹿らしいです。
また、どんなに優秀な社員であっても訴えられるリスクをとってまで引き止める必要はありません。

そもそも、退職の相談が来た時点で引き止めることは困難ですから、心理的にも法律的にもキレイなことが会社を守ることになります。
また、退職を減らすには採用・教育に一貫性を持たすことが大切です。

(採用や教育についてはこちらで解説していますので、良ければ参考にしてください)