若手の離職理由に「人間関係」が多い職場の改善方法。Z世代の離職防止について解説します。

社員数が少ないほど新卒の離職率は高くなります。人材不足が深刻な中小企業にとって、新卒の早期離職防止は急務の課題です。今回は、入社3年以内の退職を防ぐ「人間関係」の作り方をお伝えします。


新卒はなぜやめるのか?Z世代の離職事情

まず始めに「新卒の離職事情」についてお話します。

こちらは2022年10月に厚生労働省より発表された「新卒者3年以内の離職率です」

大卒は「3年以内の離職率=約3割」ですが、実は「その内の4割弱が1年以内に離職」しています。
短大卒だと4割以上、高卒だと4.5割、中卒だと6割以上が、1年以内に離職している状況です。

つまり本気で離職防止を考えるなら「最初の1年の離職を防ぐための対策が重要」ということです。

続いて、規模別に見てみます。こちらの図をご覧ください。

規模が小さい会社ほど離職率が高いことが分かります。
今後、人材不足が深刻になるほど採用活動が厳しくなることが予想されるため、このことを踏まえ、中小企業は早く手を打つ必要があると考えられます。

ではなぜ、新卒者は辞めるのか? 離職理由も見てみましょう。

1位:仕事が自分に合わなかった
2位:人間関係が良くなかった
3位:労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった
4位:賃金が良くなかった

このようになっています。

この中で、今回注目するのは「2位:人間関係」です。
人間関係を理由にした離職を防ぐ方法を、一緒に見ていきましょう。

(1位・3位・4位についての解説は、上記のリンク先で解説していますので、合わせてご覧ください)

離職者を減らす人間関係の作り方

新入社員にとっての人間関係は、上司や先輩との縦のつながりと、同僚との横の繋がりの2つです。

横のつながりは同期の仲間意識である程度放っておいても勝手に構築されていきますが、縦のつながりは意識して行う必要があります。

では、縦のつながりをどうやって構築すればいいのか?

私は「メンター制度」と「エルダー制度」の導入をお勧めしています。どちらも1対1で行う新人サポートです。

「メンター制度」はメンタル面のサポートを行います。仕事に対する不安や愚痴、不平不満など話を聞いてあげることが主な役割です。同じ部署や業務に関わる人ではなく、関係のない人が向いています。

「エルダー制度」は業務面のサポートを行うものです。仕事を一緒にする先輩が指導することで早期成長を促します。特に同期が少なくて横のつながりが持ちにくい中小企業では、こうした制度にてサポートを行うことが重要です。

メンターは入社3年~5年程度の方が理想です。世代が近い方で、尚且つ実際に乗り越えてきている方が、新人の気持ちを理解しやすいからです。

エルダーは入社1年程度の方が理想です。業務を覚えたてのため、気を付けるべきポイントを知っていることと、それを言語化させることで、エルダー本人の理解を深めさせることが出来るからです。

また、エルダー制度と合わせて行いたいのが確認テストです。教えた業務が出来るようになったかをチェックする場を設けることで、エルダーも新人もより本気になります。

ここまでメンターとエルダーの2つをご紹介しましたが、こうした制度を取り組むにあたり、気を付けるべきことがあります。

それは先輩と新人の相性です。相性が良くないとストレスを増やす要因になります。そうならないためにも、メンターと新人の交流を行った上で新人に指名をさせるなど、マッチングの方法を考える必要があります。

そしてもう1つ大切なことがあります。メンターやエルダーになる先輩社員の教育です。役割や期待されていることの理解と必要なスキルの習得、問題が起きた場合の対処方法を研修しておくことが必須です。

これから社会で活躍を期待されるZ世代を表すキーワードに「チル」と「ミー」があります。「チル」は「まったり」という意味で、「ミー」は、「発信欲求」や「承認欲求」のことです。

Z世代はワークライフバランスという言葉に象徴されるように、自分の時間や居心地の良さを大切にします。
また、スマホ第一世代としてSNSと共に成長してきた彼らは、情報を発信し「いいね」をもらいたいという「発信欲求」や「承認欲求」が強いのが特徴だと言われています。
その他にも、時間を効率的に使うことを重視する傾向がみられます。

これらを踏まえて、偉そうにしない、否定しない、プライベートを侵さないなど、不快感を感じさせないことをメンターやエルダーに研修しておくと良いでしょう。

身近に接する人との関係が良いと人間関係の悩みは大幅に軽減します。
こうした取り組みをきっかけに社内全体の人間関係を改善していくことがとても大切です。

近頃は、安心して発言や行動が出来る環境づくりとして、心理的安全性が注目されています。お
互いを尊重し、相談しやすい環境があり、感謝を伝えあう風土や失敗を許される雰囲気をつくることで、心理的安全な状態が作られます。
心理的安全性については「心理的安全性をつくるリーダーシップ」という記事でも解説しています。

昭和の時代は物の豊かさが幸せであり、お金を稼ぐ=幸せでしたが、令和の時代は心の豊かさが幸せのため、仕事への価値観は大きく異なります。経営者が考えるべきことは、人材が定着する仕組みづくりです。

人材定着・生産性向上に向け従業員の心を満足させるにはどうすべきなのか?今後のビジネスは、メンタルの扱い方で大きく差がつくと言っても過言では無いと私は思っています。